結論:20%になるのは早くても2028年から
暗号資産(仮想通貨)の利益を一律20%で課税する改正は、2026年3月31日に公布された「所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)」に盛り込まれました。租税特別措置法に、暗号資産の申告分離課税ほかの所得と合算せず、その所得だけに一律の税率をかけて計算する方式。上場株式の譲渡益と同じ考え方。(第38条の2)と損失の繰越控除(第38条の3)の規定が新しく設けられています。
ところが、この規定がいつから使えるかは、税法の中では日付で決まっていません。財務省の「令和8年度税制改正の大綱」によると、適用開始日は「金融商品取引法の改正法の施行の日の属する年の翌年の1月1日」です。つまり、暗号資産を金融商品取引法(金商法)の対象に移す別の改正法が施行された年の、翌年の元日からスタートします。
その改正金商法は2026年7月15日に成立し、7月23日に公布されました(同年8月12日に一部が「公布から20日後」に施行されていることからも確認できます)。暗号資産に関する本体部分は「公布の日から起算して1年を超えない範囲内で政令で定める日」に施行されるため、遅くとも2027年7月ごろまでには始まる見込みです。施行が2027年中なら、分離課税は2028年1月1日からになります。
注意したいのは、2028年という年は当サイトが法律の条文から計算した見込みであって、政府が発表した日付ではないことです。施行日を定める政令は、この記事の執筆時点では確認できていません。理屈の上では、施行が2026年中なら2027年1月からという可能性もありますが、残り期間を考えると現実的ではないでしょう。
決定から開始までのタイムライン
税制改正の大綱から法律の成立、施行、そして実際の適用開始まで、主な出来事を時系列で並べました。灰色の点は、まだ日付が決まっていない今後の予定です。
- 2025年12月26日令和8年度税制改正の大綱を閣議決定 金融商品取引法などの改正を前提に、特定暗号資産の譲渡益を20%の分離課税とし、損失の3年繰越を認める方針が示されました。
- 2026年3月31日改正税法(令和8年法律第12号)を公布 租税特別措置法第38条の2(分離課税)と第38条の3(繰越控除)が新設されました。
- 2026年4月10日金商法等の改正案を閣議決定・国会提出 暗号資産を資金決済法から金融商品取引法の対象に移す法案です。
- 2026年7月15日改正金商法が成立 インサイダー取引規制や情報開示のルールが暗号資産にも導入されることになりました。
- 2026年8月12日一部を先行施行 無登録業者への罰則の引き上げと、証券取引等監視委員会の犯則調査権限の追加が始まりました。
- 2027年7月ごろまで(政令で決定)暗号資産に関する本体部分を施行 取引所は「暗号資産取引業者」として金商法の規制下に入ります。
- 早くても2028年1月1日分離課税20.315%の適用開始(当サイトの見込み) この日以後の特定暗号資産の譲渡から新しい税率が適用されます。
- 適用開始の翌年から取引業者による税務署への報告 取引業者は、取引をした居住者等の氏名・住所・個人番号や銘柄などを、翌年1月31日までに税務署へ報告します。
規制の中身、たとえばインサイダー取引の禁止や取引所の責任準備金については、日本の暗号資産規制と金商法への移行のページで詳しく扱っています。
「2026年から20%」という情報はなぜ広まった?
検索すると、「2026年から仮想通貨の税金は20%」と書いたページがいまでも見つかります。英語のサイトでは特に多く見られます。理由はいくつか考えられます。
1つめは名前です。今回の改正は「令和8年度税制改正」と呼ばれます。令和8年は2026年なので、「2026年度の改正=2026年から適用」と読み違えやすいのです。実際には、税制改正の「年度」は改正を決めた予算年度を指すだけで、適用時期は項目ごとに別に決まっています。
2つめは、法律の公布が2026年3月だったことです。「法律が成立した=もう始まった」と受け取られがちですが、今回の規定は施行日が別の法律に連動しています。3つめに、2025年の段階で「早ければ2026年にも」と報じた記事が更新されないまま残っていることもあります。
いずれにしても、2026年分の利益は2027年の確定申告で、これまでどおり総合課税給与などほかの所得と合計して、5〜45%の累進税率で所得税を計算する方式。暗号資産の利益は現在この方式で課税される。で申告します。「20%だから」と安心して売却し、翌年の申告で想定以上の税額になる、という失敗は避けたいところです。現行制度での計算方法は仮想通貨の税金計算ガイドにまとめています。
何が変わる?現行制度と改正後の比較
改正後は、同じ暗号資産でも「どこで売ったか」「どの銘柄か」によって扱いが分かれます。登録業者を通じた特定暗号資産の売却は20%の分離課税、それ以外は総合課税の譲渡所得です。主な違いを表にしました。
| 項目 | 現行(2027年分まで) | 改正後:特定暗号資産を登録業者で売却 | 改正後:それ以外の暗号資産 |
|---|---|---|---|
| 所得の区分 | 雑所得(収入300万円超で帳簿があれば原則事業所得) | 申告分離課税の譲渡所得等 | 総合課税の譲渡所得(継続的な売買は雑所得・事業所得) |
| 税率 | 所得税5〜45%+住民税10%(最大約55%) | 一律20%(所得税15%+住民税5%、復興税込み20.315%) | 所得税5〜45%+住民税10% |
| 損失の繰越 | できない | 3年間繰越可(一定の要件あり) | できない |
| ほかの所得との相殺 | できない | ほかの所得とは分離して計算 | できない(改正で明記) |
| 譲渡所得の特別控除50万円・長期保有の1/2課税 | 対象外(雑所得のため) | 対象外 | 適用しない(改正で明記) |
20%の内訳は、所得税15%と住民税5%です。所得税には復興特別所得税(所得税額の2.1%)が加わるため、実際の税率は上場株式の譲渡益と同じ20.315%になります。2027年分以後は復興特別所得税の税率が下がり、新しく防衛特別所得税が加わりますが、国税庁によれば合計の税率は変わりません。
給与がいくらでも、利益がいくらでも、税率は一律です。高い税率の区分にいる人ほど負担が軽くなる一方、課税所得が少なく5%や10%の区分に収まる人にとっては、税率だけを比べると現行制度のほうが低いこともあります(後述のシナリオ参照)。分離課税は、ほかの所得と分けて計算する仕組みなので、どちらか有利なほうを選ぶという制度ではありません。
対象になる「特定暗号資産」とは
20%の対象は、すべての暗号資産ではありません。大綱では、改正金商法にもとづく「金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等」を特定暗号資産改正金商法の登録簿に登録された暗号資産。国内の登録業者が取り扱う銘柄がこれにあたり、分離課税の対象になる。と呼び、これを暗号資産取引業者に対して(または取引業者を通じて)譲渡した場合の所得を分離課税の対象としています。
実務的に言い換えると、①国内の登録業者が取り扱っている銘柄を、②国内の登録業者で売る、という2つの条件がそろったときだけ20%になる、ということです。現在、国内の金融庁登録の暗号資産交換業者は、改正金商法の施行後は「暗号資産取引業者」として新しい登録の枠組みに移ります。
反対に、次のようなケースは20%の対象外になると考えられます。
- 海外取引所(金融庁に登録していない業者)での売却。日本居住者向けの営業には警告が出ている業者も多く、撤退も相次いでいます(海外取引所の撤退・警告まとめ)。
- DEX分散型取引所。運営会社を介さず、ブロックチェーン上のプログラムで利用者同士が直接交換する仕組み。(分散型取引所)でのスワップや、P2P・個人間取引での売却。
- 国内の登録業者で扱われていない銘柄の売却。
- お店での支払いなど、登録業者を通さずに暗号資産を手放す取引。
ステーキングやレンディングの報酬そのものについては、大綱に分離課税の対象とする記載はありません。報酬を受け取った時点の所得は、引き続き総合課税で扱われると考えておくのが無難です。どの銘柄が登録簿に載るのかは施行後に明らかになるため、保有している銘柄が国内の登録業者で取り扱われているかを、いまから確認しておくと判断がしやすくなります。
損失の3年繰越と損益通算のルール
改正のもう一つの柱が、損失の繰越控除ある年に引ききれなかった損失を翌年以降に持ち越し、将来の利益から差し引くこと。株式やFXでは3年間認められている。です。特定暗号資産を取引業者に譲渡して生じた損失のうち、その年の特定暗号資産の所得から引ききれなかった分は、一定の要件のもとで翌年以後3年間の特定暗号資産の所得から差し引けるようになります。
たとえば2028年に特定暗号資産で100万円の損失、2029年に150万円の利益が出た場合、2029年は100万円を差し引いた50万円に20.315%がかかる、というイメージです。現行制度では、この100万円の損失は2028年のうちに消えてしまいます。
ただし注意点もあります。繰越控除の対象になるのは、適用開始日以後の特定暗号資産の譲渡で生じた損失です。2026年や2027年に出た損失を、2028年以降に持ち越すことはできません。また、大綱の書きぶりでは損失を差し引く相手は「特定暗号資産に係る譲渡所得等」で、上場株式や投資信託の損益と通算できるとはされていません。繰越に必要な「一定の要件」の具体的な内容(毎年の申告が必要かどうかなど)は、今後の政省令や国税庁の案内で確認が必要です。
対象外の暗号資産は、むしろ厳しくなる
見落とされがちですが、改正は「20%になる暗号資産」だけでなく、「ならない暗号資産」のルールも変えます。国税庁の「令和8年度 税制改正のあらまし」によると、特定暗号資産以外の暗号資産や、登録業者を通さずに売った特定暗号資産は、総合課税の譲渡所得資産を売ったときの所得の区分。通常は最大50万円の特別控除や長期保有の2分の1課税があるが、暗号資産には適用されない。として扱われるようになります。継続的に売買して利益を得ている場合などは、これまでどおり雑所得や事業所得です。
「譲渡所得になるなら、普通の資産と同じ控除が使えるのでは」と考えたくなりますが、改正では次の3つがはっきり否定されています。
- 譲渡所得の特別控除(最大50万円)は差し引かない
- 5年を超えて保有した場合に所得を2分の1にする長期譲渡の措置は適用しない
- 譲渡損失を、ほかの総合課税の所得と損益通算することは認めない
つまり、海外取引所やDEXでの売却は、改正後も最大約55%の累進税率がかかり、損失の救済もありません。国内の登録業者に資産を移しておくかどうかは、税金の面からも重要な判断材料になります。移す場合は、トラベルルールのもとでの送金先の制限にも注意してください。
デリバティブと暗号資産の投資信託・ETF
大綱では、特定暗号資産に係る暗号資産デリバティブ取引(いわゆる証拠金取引のうち対象となるもの)を、FXなどと同じ「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」と、損失の繰越控除の対象に加えるとしています。適用は、適用開始日以後に行う差金決済からです。現行制度では、暗号資産の証拠金取引はFXと違って総合課税なので(国税庁FAQ 2-12)、ここも大きな変更点です。
暗号資産を投資対象とする投資信託やETFについては、特定暗号資産を対象とする投資信託の受益権を「一般株式等」の範囲に加えることなどが盛り込まれました。ただし、これは投資信託及び投資法人に関する法律の施行令の改正が前提とされています。国内でビットコインETFなどが買えるようになる時期は、執筆時点では公式には示されていません。
いま売るか、2028年まで待つか:4つのシナリオ
大きな含み益がある人ほど、「2027年中に売るか、2028年以降まで待つか」が気になるはずです。ここでは判断材料として、2026年分の税率表で概算した税額と、同じ利益に20.315%がかかった場合を比べます。所得控除の額は変わらないものとし、利益はすべて登録業者で売った特定暗号資産と仮定しています。投資判断の助言ではない点にご注意ください。
| ケース | 現行制度で売った場合 | 分離課税(20.315%)の場合 | 読み取れること |
|---|---|---|---|
| A:課税所得700万円+利益300万円 | 約110万7,000円 | 約60万9,000円 | 差は約50万円。ただし相場が約6%下がると差は消える計算 |
| B:年収500万円の会社員+利益100万円 | 約19万3,000円 | 約20万3,000円 | 税率面のメリットはほぼなく、現行のほうがわずかに小さい |
| C:課税所得100万円+利益50万円 | 約7万6,000円 | 約10万2,000円 | 5%の区分に収まる人は、現行のほうが税額は小さい |
| D:含み損を抱えている | 損失はほかの所得と相殺できず、繰越もできない | 3年間の繰越控除の対象になり得る | 損失の扱いは改正後のほうが有利。ただし相場次第 |
ケースAのように高い税率の区分に利益が積み上がる人は、税額だけを見れば待つほうが有利です。ただし、価値1,000万円(取得価額700万円)の保有分で計算すると、いま売れば手取りは約889万円。2028年以降に売る場合、相場が約6.2%下がるだけで手取りは同じ水準になり、それ以上下がれば待ったほうが不利です。開始時期が政令で確定していないこと、保有銘柄が特定暗号資産になるかどうかが未確定であることも、待つ側のリスクです。
ケースBとCのように課税所得が少ない人は、税率面のメリットはほとんどありません。むしろ、5%や10%の区分に収まる範囲で、年ごとに分けて利益を確定するほうが合理的な場合もあります。ケースDのように含み損がある場合、改正後は損失を3年間繰り越せますが、繰越の対象になるのは適用開始後に確定した損失だけです。
下のシミュレーターは、初期値をケースA(課税所得700万円+利益300万円)にしています。ご自身の数字に置き換えて、現行制度と分離課税の差を確かめてください。
↑ この計算ツールはページ上部にあります。数字を入れて試してみてください。
なお、2028年より前に海外へ移住する予定がある人は、日本の居住者でなくなった後の扱いや、移住先の国の税金も関係してきます。英語のページになりますが、日本への移住・日本からの転出と暗号資産(英語)で整理しています。
改正に向けて、いまからできる準備
開始日が決まるのを待つ間にも、準備できることはあります。どれも、現行制度のもとでの確定申告にも役立つものです。
- 2026年分・2027年分は総合課税で申告することを前提に、利益の確定時期と金額を計画する
- 保有している銘柄が、国内の登録業者で取り扱われているかを確認する
- 海外取引所やウォレットにある暗号資産は、登録業者で売却できる状態かを確認する
- 年間取引報告書とCSVの取引履歴を毎年保存し、取得価額をいつでも説明できるようにする
- 取引所から求められるCARFの届出(居住地国の届出書)を期限までに提出する
- 改正金商法の施行日を定める政令と、国税庁の案内が出たら内容を確認する
大きな金額を動かす前には、所轄の税務署や暗号資産に詳しい税理士に相談しておくと安心です。無料の相談窓口は税金ガイドの相談窓口の章で紹介しています。
分離課税20%:よくある質問
仮想通貨の分離課税はいつから始まりますか?
開始日はまだ正式に決まっていません。法律では「改正金融商品取引法の施行日の属する年の翌年1月1日」から適用するとされ、改正金商法の暗号資産部分は2027年7月ごろまでに施行される見込みのため、早くても2028年1月1日からと当サイトは見ています。施行日を定める政令が出た時点で確定します。
2026年から20%になったのではないのですか?
なっていません。「令和8年度(2026年度)税制改正」という名前と、2026年3月に法律が公布されたことから「2026年から」と誤解されやすいのですが、2026年分・2027年分の利益は従来どおり雑所得の総合課税(最大約55%)です。
どの仮想通貨が20%の対象になりますか?
金融商品取引法にもとづく登録簿に登録された暗号資産(特定暗号資産)を、登録を受けた暗号資産取引業者を通じて売却した場合の利益が対象です。国内の登録業者で扱われていない銘柄や、海外取引所・DEX・個人間取引での売却は対象外で、引き続き総合課税となります。
今年の損失を2028年以降に繰り越せますか?
できません。3年間の繰越控除は、適用開始日以後の特定暗号資産の譲渡で生じた損失が対象です。現行制度の雑所得の損失は、翌年以降に繰り越す仕組み自体がありません。
海外取引所で売った利益も20%になりますか?
なりません。分離課税の対象は登録業者を通じた特定暗号資産の譲渡に限られます。海外取引所などでの売却は総合課税の譲渡所得として扱われ、譲渡所得の50万円の特別控除や長期保有の2分の1課税、ほかの所得との損益通算も認められないことが改正で明記されています。
分離課税になれば確定申告は不要になりますか?
現時点では、不要になるとは言えません。財務省の大綱には、株式の特定口座(源泉徴収あり)のような仕組みは示されておらず、取引業者が税務署に取引内容を報告する制度が設けられることが書かれています。詳細は今後の政省令などで確認が必要です。
このページの位置づけ
このページは、2026年3月に公布された改正税法と財務省・国税庁・金融庁の公表資料をもとにした一般的な解説です。適用開始日など、政令で決まる事項は確定していません。新しい発表があれば内容を更新します。個別の判断は税務署または税理士にご確認ください。





