ステーブルコイン価格が法定通貨などに連動するよう設計された暗号資産・デジタル通貨の総称。日本円や米ドルと1対1で交換できる仕組みのものが多い。は、ビットコインのように値動きを楽しむためのものではなく、ブロックチェーン上で「お金」として使うためのものです。1JPYCがいつでも1円として扱われるなら、ネット上の支払いや送金、プログラムによる自動決済に、値下がりを気にせず使えます。海外では米ドル建てのUSDCやUSDTが広く使われてきましたが、日本では2025年秋にようやく日本円建ての本格的なステーブルコインが登場しました。
日本の特徴は、法律の枠組みが先にできたことです。2023年6月に施行された改正資金決済法で、法定通貨に連動するステーブルコインは「電子決済手段法定通貨建てで、不特定の相手への支払いに使え、電子的に移転できる資産。暗号資産とは別の法的カテゴリーで、発行者は銀行・資金移動業者・信託会社に限られる。」と位置づけられ、ビットコインなどの暗号資産とは別のルールで扱われることになりました。発行できるのは銀行、資金移動業者、信託会社だけで、仲介する業者も金融庁への登録が必要です。このページでは、その枠組みの中で動いている主な日本円ステーブルコインを順に見ていきます。
JPYCとは?日本円と1対1で連動する仕組み
JPYCは、東京のJPYC株式会社が発行する日本円建てのステーブルコインです。同社は2025年8月18日に資金決済法にもとづく資金移動業者銀行以外で送金サービスを提供するための登録。登録区分によって1回の送金額に上限があり、JPYCの区分では1回100万円まで。として登録され(関東財務局長 第00099号)、同年10月27日の午後1時から、電子決済手段としてのJPYCの発行を始めました。資金移動業者が日本円ステーブルコインを発行したのは国内で初めてです。
仕組みはシンプルで、利用者が日本円を払い込むと同じ額のJPYCが発行され、JPYCを戻すと同じ額の日本円が払い戻されます。この払い戻しを償還発行体がステーブルコインを回収し、同じ額の法定通貨を払い戻すこと。いつでも1対1で償還できることが価格安定の根拠になる。と呼びます。発行時の発表によると、発行残高の100%以上を日本円の預貯金と日本国債で保全するとしています。対応するブロックチェーンはEthereum、Polygon、Avalanche、そして2026年5月に追加されたKaiaの4つです。
- 2025年6月1日旧JPYC Prepaidの新規発行を終了 前払式支払手段としての発行をやめ、電子決済手段への移行を準備
- 2025年8月18日資金移動業者として登録
- 2025年10月27日JPYCと発行・償還プラットフォーム「JPYC EX」を公開
- 2026年5月30日累計発行額30億円、口座開設数1万9,000件
- 2026年9月18日累計発行額100億円を突破
伸び方は急です。累計発行額は2026年2月時点で約10億円でしたが、9月18日には100億円を超えました。ここで言う「累計発行額」は、これまでに発行された総額で、現在出回っている残高とは別の数字である点に注意してください。会社としては、今後3年で10兆円規模の発行残高を目標に掲げています。なお、JPYC株式会社は日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)の会員にもなっています。
旧「JPYC Prepaid」との違い
JPYCという名前は2021年ごろから知られていましたが、当時のものは「前払式支払手段」、つまりプリペイドカードやギフト券に近い扱いでした。このJPYC Prepaidは2025年6月1日に新規発行を終えています。発表時点では、すでに持っている残高は決済や譲渡に引き続き使える一方、現金での払い戻しは予定されていないとされていました。現在のJPYCは日本円で償還できる電子決済手段なので、名前は同じでも法的な性格はまったく違います。古い情報を見るときは、どちらの話なのかを確認しましょう。
日本のステーブルコイン規制:電子決済手段の3つのタイプ
日本円ステーブルコインは、誰が発行するかによって性格が変わります。大きく分けると、銀行が預金をもとに発行するタイプ、資金移動業者が発行するタイプ(JPYC)、信託銀行などが信託の仕組みで発行するタイプ(JPYSCや3メガバンクの実証)の3つです。資金移動業者が発行するタイプは、送金額に上限がある代わりに参入しやすく、信託型は上限がない代わりに裏付け資産の管理が厳しく求められます。
| タイプ | 発行者 | 主な例 | 金額の上限 | 裏付け資産 |
|---|---|---|---|---|
| 資金移動業者型 | JPYC株式会社 | JPYC | 1回100万円 | 預貯金と日本国債 |
| 信託型 | SBI新生信託銀行 | JPYSC | なし | 信託財産(一部を短期国債で運用) |
| 信託型(実証段階) | 三菱UFJ信託銀行(3メガバンクが共同委託) | 3行共同発行のステーブルコイン | 流通上限なしの設計 | 銀行預金 |
| 海外発行 | Circle、Rippleなど | USDC、RLUSD | 仲介業者ごとに設定 | 各発行体の準備資産 |
2026年6月1日には、2025年に成立した改正資金決済法が施行されました。これにより、信託型ステーブルコインの裏付け資産について、発行額の50%を上限に、満期3か月以内の日本国債や定期預金で運用できるようになりました。それまでは原則として普通預金のようにすぐ引き出せる預金で管理する必要があったため、発行体にとっては運用益を得る道が開けたことになります。同じ改正で、電子決済手段や暗号資産のサービスを仲介する新しい業種も生まれています。
ステーブルコインを利用者に売買・仲介できるのは、金融庁に登録した電子決済手段等取引業者だけです。金融庁の登録一覧(2026年8月27日現在)に載っているのは、2025年3月4日に登録されたSBI VCトレード(USDC、RLUSD、JPYSC)と、2026年8月27日に登録されたCoincheck(USDC)の2社だけです。規制の全体像は日本の暗号資産規制でも解説しています。
SBIの信託型ステーブルコイン「JPYSC」とは
JPYSC(ジェイピーワイエスシー)は、SBI新生信託銀行が発行する国内初の信託型日本円ステーブルコインです。法律上は「第3号電子決済手段」に当たり、SBI新生信託銀行が発行者として裏付けの信託財産を管理し、SBI VCトレードが発行の委託者兼取扱業者として販売を担います。開発にはSBIグループの持分法適用会社であるStartaleも関わっています。
2026年6月24日に、まずSBI VCトレードの口座内に限って提供が始まりました。両社の発表によると、9月7日時点の発行残高は約201億円で、SBI VCトレードの「JPYSCレンディング」への申し込み分約69億円を合わせると約270億円相当になります。改正法を受けて、裏付け資産のうち10億円は短期国債での運用に回されています。
入手方法はシンプルです。SBI VCトレードに口座を開き、日本円をクイック入金(無料)で入れて、販売所でJPYSCを買います。公式ページによると価格は1JPYSC=1円で固定され、スプレッドはかからず、1回の注文は1JPYSCから最大1億JPYSCまでです。資金移動業者型と違って100万円の上限はありません。一方で、現時点では外部のウォレットへの出庫ができず、JPYSCで暗号資産を買うこともできません。パブリックチェーン上での流通は、関係法令や税務の整理がつき次第、Ethereumから始める予定とされています。
JPYSCレンディングは預金ではありません
SBI VCトレードのJPYSCレンディングは年1〜3%程度の見込み利率が示されていますが、預金ではなく預金保険の対象外です。貸し出したJPYSCは資金決済法上の分別管理の対象外で、同社が破綻した場合に全部または一部が戻らない可能性があると、公式ページ自身が説明しています。原則として中途解約もできません。
USDCやRLUSDは日本で買える?
米ドル建てのステーブルコインも、登録業者を通じて日本で買えるようになりました。SBI VCトレードは2025年3月に国内で初めてUSDCの取り扱いを始め、その後Ripple社のRLUSDも加えています。RLUSDについては、1回の発注と出庫の上限をそれぞれ100万円相当としています。海外で発行されたステーブルコインを国内で扱う場合、こうした金額の上限がつくのが一般的です。
Coincheckは2026年8月27日に電子決済手段等取引業者として登録され、取り扱う電子決済手段としてUSDCが登録一覧に記載されました。ただ、利用者向けにいつ、どのような形でUSDCの取引を提供するのかは、今回の調査では確認できませんでした。Coincheckの公式発表で最新の状況を確認してください。取引所としての特徴はCoincheckのレビューとSBI VCトレードのレビューにまとめています。
米ドル建てのステーブルコインは、ドルに対しては安定していても、日本円で見れば為替レートの分だけ価値が動きます。日本円で生活している人にとっては「値動きのない資産」ではない点を覚えておきましょう。
3メガバンクの共同ステーブルコインはいつ使える?
銀行も動いています。三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行の3行は、三菱UFJ信託銀行とTISIと組み、2026年7月17日から23日にかけて、日本円建てステーブルコインを共同で発行する実証実験を行いました。3行が共同の委託者、三菱UFJ信託銀行が受託者となる信託契約で、資金決済法上の「特定信託受益権」としてステーブルコインを発行し、三菱商事の日本拠点と海外拠点の間の国際送金を想定して、発行から移転、償還までを検証しています。この取り組みは、2025年11月に金融庁の「決済高度化プロジェクト」の支援案件に選ばれていました。
10月16日に公表された結果では、システムの安全性と、複数の銀行が共同で発行するモデルの実現性を確認できたとしています。想定している設計は、流通額に上限のない信託型で、裏付けは銀行預金、流通するのは銀行で本人確認を済ませた利用者の間に限るというものです。3行は6月10日の発表で、2026年度中に実際の取引を始めることを目指すとしています。ただし、まずは企業の決済や送金が中心で、個人がいつ使えるようになるかは発表されていません。
JPYCを手に入れる方法
JPYCは暗号資産ではないため、ビットコインのように国内の取引所の販売所で買うことはできません。2026年9月時点の金融庁の登録一覧でも、JPYCを取り扱う電子決済手段等取引業者は見当たりません。いちばん基本的な方法は、JPYC株式会社の公式プラットフォーム「JPYC EX」で、日本円と引き換えに発行してもらうことです。発行時の公式発表と、その後の更新情報で確認できた流れは次のとおりです。
受け取り用のウォレットを用意する
JPYCは自分で管理するウォレット暗号資産やステーブルコインを保管・送受信するためのアプリや機器。自己管理型では秘密鍵や復元フレーズを自分で守る必要がある。に届きます。Ethereum、Polygon、Avalanche、Kaiaのどれで受け取るかを決め、対応するウォレットを準備しましょう。JPYC EXと連携できるHashPort Walletのようなアプリもあります。
JPYC EXに登録し、マイナンバーカードで本人確認
犯罪収益移転防止法にもとづく本人確認が必要で、JPYCはマイナンバーカードの公的個人認証マイナンバーカードのICチップに入った電子証明書を使う本人確認の仕組み(JPKI)。スマホで読み取るだけでオンライン本人確認ができる。に一本化しています。受け取り用のウォレットアドレスと、払い戻しを受ける銀行口座も登録します。
発行予約をして日本円を振り込む
JPYC EXで発行予約をし、指定された口座へ日本円を振り込みます。着金が確認されると、登録したアドレスに同額のJPYCが届きます。2026年5月の更新以降、上限は1回あたり100万円で、短時間に連続して発行を申し込むことはできません。
日本円に戻すときは償還予約
償還予約をしたうえで、登録済みのアドレスから指定アドレスへJPYCを送ると、登録口座に日本円が払い戻されます。登録していないアドレスや、他人のアドレスから送ったJPYCは償還の対象になりません。
最低発行額や手数料などの細かい条件は、今回確認できた公式発表には書かれていませんでした。条件は変わることもあるため、手続きの前にJPYC公式サイトで最新の案内を確認してください。また、ブロックチェーン上でJPYCを送るときは、各チェーンのガス代ブロックチェーン上で送金や取引を処理してもらうために払う手数料。EthereumならETH、PolygonならPOLなど、チェーンごとのコインで支払う。を払うためのコインが別に必要になる点にも注意しましょう。
JPYC EX以外の入り口もあります。au PAYアプリの「αU wallet」では、Pontaポイントを月300ポイントまでJPYCに交換でき、JPYCをau PAY残高にチャージして加盟店で使うこともできます。JPYC社によると、LINE上のサービス「Unifi」でもJPYCを使えるようになりました。アプリ連携の全体像は仮想通貨が買えるアプリ連携まとめで整理しています。
JPYCは何に使える?
JPYCの使い道は、まだ「広く普及している」というより「使える場所が少しずつ増えている」段階です。JPYC社が挙げている用途は、店頭やネットでの支払い、キャンペーンの報酬配布、ポイントとの組み合わせ、企業の新規事業の実証などです。発行開始時には、クレジットカードのnudgeでJPYCによる利用代金の支払いに対応する計画や、アステリアのデータ連携ツール「ASTERIA Warp」でJPYCの送金を自動化する機能の開発も発表されていました。
個人にとって身近なのは、ウォレット間の送金です。HashPort Walletには、送金先アドレスやネットワーク、金額があらかじめ入力された状態で送れる「JPYCかんたん送金」機能があります。2026年9月には、JPYCで支払う人への値引きを加盟店が行えるよう、JPYC社が公正取引委員会に情報提供を行ったとも報じられています。日本円と同じ感覚で使えるデジタルなお金として、どこまで日常に入ってくるかはこれからの動き次第です。
日本円ステーブルコインのリスクと注意点

「1円で固定」と聞くと預金と同じように感じますが、ステーブルコインは預金ではありません。預金保険の対象外で、価値を支えているのは発行体の裏付け資産と、いつでも償還に応じる仕組みです。発行体の財務や裏付け資産の管理状況は、公表資料で定期的に確認しておくと安心です。
自分でウォレットを管理する以上、操作ミスの責任も自分にあります。送り先のアドレスやネットワークを間違えるとJPYCが戻らないことがあり、ウォレットの復元フレーズをなくせば誰も助けてくれません。償還できるのは登録済みのアドレスから送ったJPYCだけなので、受け取ったJPYCをどのアドレスで保管しているかも把握しておきましょう。
偽物にも注意が必要です。ブロックチェーン上では、誰でも「JPYC」という名前のトークンを作れてしまいます。本物かどうかは発行体が公表しているコントラクトアドレスで確かめ、SNSやメッセージアプリで「JPYCがもらえる」「高利回りで運用できる」と誘われても応じないでください。手口は暗号資産詐欺の手口と対策にまとめています。
- JPYCは1回100万円まで。大きな金額は分けて手続きが必要
- JPYSCは現時点で外部ウォレットに送れない
- USDCなど米ドル建ては、日本円で見ると為替で価値が動く
- レンディングに出したステーブルコインは分別管理の対象外になる場合がある
ステーブルコインの税金はどう考える?
税金については、まだはっきりしない部分があることを正直にお伝えしておきます。国税庁は暗号資産の税務上の取扱いをFAQで詳しく示していますが、電子決済手段であるステーブルコインの保有や移転について明示した資料は、今回の調査では見つかりませんでした。以下は、確認できている原則にもとづく考え方です。
まず、JPYCやJPYSCは1円で発行・償還されるため、日本円として受け取り、日本円に戻す限り、値上がり益が生じることは想定されていません。一方、手持ちのイーサリアムなどの暗号資産をJPYCやUSDCに替えた場合は、その時点で手放した暗号資産の損益が確定すると考えられます。暗号資産同士の交換や、暗号資産での支払いが課税対象になるのと同じ考え方で、利益は原則として雑所得です。米ドル建てのステーブルコインは円換算の価値が動くため、為替による損益の扱いも含めて専門家に確認するのが確実です。
JPYSCのレンディングで得た利用料については、SBI VCトレードが雑所得として扱われると案内しています。具体的な計算や申告の要否は、お住まいを管轄する税務署か税理士に相談してください。暗号資産の税金の基本は仮想通貨の税金と確定申告、2028年以降に予定される制度変更は分離課税20%はいつから?で解説しています。
JPYC・日本円ステーブルコイン:よくある質問
JPYCとは何ですか?
JPYCは、JPYC株式会社が資金決済法上の資金移動業者として発行する日本円建てのステーブルコインです。1JPYC=1円で発行・償還され、裏付け資産は預貯金と日本国債で保全されています。2025年10月27日に発行が始まり、累計発行額は2026年9月18日時点で100億円を超えました。
JPYCは仮想通貨取引所で買えますか?
JPYCは法律上「暗号資産」ではなく「電子決済手段」に当たり、2026年9月時点で国内の暗号資産交換業者や電子決済手段等取引業者の取扱一覧には入っていません。基本は公式プラットフォームのJPYC EXで発行します。au PAYのαU walletでPontaポイントから交換する方法もあります。
JPYCとJPYSCの違いは何ですか?
JPYCは資金移動業者が発行するタイプで、1回あたり100万円の上限があります。JPYSCはSBI新生信託銀行が発行する信託型で、100万円の上限はありません。ただしJPYSCは現在SBI VCトレードの口座内でのみ使え、外部のウォレットには送れません。
以前のJPYC(JPYC Prepaid)はどうなりましたか?
前払式支払手段として発行されていたJPYC Prepaidは、2025年6月1日に新規発行を終了しました。発表時点では、すでに持っている残高は決済や譲渡に引き続き使える一方、現金での払い戻しは予定されていないとされていました。現在のJPYCとは法的な位置づけが異なります。
JPYCに税金はかかりますか?
JPYCは1円で発行・償還されるため、日本円として使う限り値上がり益は想定されていません。ただし、手持ちの暗号資産をJPYCやUSDCに替えると、手放した暗号資産の側で損益が確定すると考えられます。ステーブルコインそのものの扱いについて国税庁の明示的な資料は確認できなかったため、具体的には税務署や税理士に確認してください。
メガバンクのステーブルコインは個人も使えますか?
三菱UFJ銀行・みずほ銀行・三井住友銀行の共同ステーブルコインは、2026年7月に企業間の国際送金を想定した実証実験を終えた段階です。3行は2026年度中の実取引開始を目指すとしていますが、個人向けの提供時期は発表されていません。





